卒論SS「失望」

ネタ・小話

「失望した。」 

西日の差し込むゼミ室で私はそう呟いた。

就職も決まり、卒業まであと約半年、確かに卒論は進んでいたはずなのに。

このゼミに入る前から卒論に取り上げたいテーマは決まっていたはずなのに。

“卒論らしき何か”を見返すと、導入に当たる序文には堅苦しい文章と用語が並び、いかにも卒論らしい。

にもかかわらず、そこから一向に進む気配はない。

──何かがおかしい。

私は序文と計画書を読み返し、ある重大な過ちに気がついた。

「具体的な研究内容が何1つ書かれていない……。」

そんなはずはない、と私は狼狽えながら首を振った。

暦の上では秋に入り、これからは日も短くなる一方だ。

そんな時期に具体的なテーマすら決まっていないというのか。ありえない。

しかし私の頭の中に考えはなかった。空虚だった。

いつもそう、考えているフリをして結局は何も考えてない。

元よりサボり癖があったとはいえ、狐につままれたようだった。

これを青天の霹靂というのか。いや、こうなることは予想できたことだし、何より薄々感じていた。

それなのに私は認めたくなかったがために執拗に文の体裁を整え、教授に対しても何か腹案があるかのように振る舞ってきた。

もしかしたら教授の目にはその振る舞いが滑稽に映ったかもしれない。

事実、半年前に指摘されたことが今なお改善されていない。

大学生活はしばしば「モラトリアム期間」と呼ばれ、”人生の夏休み”と揶揄されることもある。

この理屈でいくと「卒業論文」、それは”夏休みの宿題”といえるだろう。

もっとも、提出は卒業を目前に控えた冬にはなるが、私はその宿題を冬までには終わらせたいと決意を新たにした。

大学生活の集大成である卒論で”醜態成”を晒すわけにはいかないのだから──

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